美味しい美味しい、桃まんの秘密。
「ふ、ぇー・・・・・。」
「大丈夫あるよ!ほんの少しだけある!
こんくらいの小さな穴なら中の餡も出てこないある!」
「でもぉ・・・・ぐすっ」
「菊はのくれたものなら喜ぶある!
それに今までで一番キレイだと美味しそうあるよ!!」
「ほ・・・んとぉ?」
「本当ある!我、ウソはつかないあるよ!」
「兄様は、にーにのウソにはきをつけなさいってゆーよ・・・?」
(菊あの野郎覚えとけよ)「にーにのこと信じられないあるか?」
「ううん!にーにのりょうりおいしいもん!りょうりおいしくつくれるひとはいいひとー。
いいひとはしんじれるよ!だからにーにもしんじる!」
「おー、はいい子あるねー!じゃー、包むあるよ!」
「わたしするー!」
「桃まん、潰さないように気をつけるあるよ!」
「はーい。」
「しっかし、今からだと行くのにも時間かかるあるね・・・。」
「・・・・まに、あう?」
ここまで五日間。
自分の兄へ贈るために、と一生懸命桃まんを作るの姿を見てきたのだ。
どんな方法を使ってでも間に合わせてやりたい。
いや、間に合わせてやる自信はある。
・・・・けれど、気になることがあるのだ。
「にーに?」
「え、あ、あぁ。大丈夫あるよー。にーにに任せるある!」
一人でいろ、と言ったのは自分だが、あいつの性格上もうそろそろ限界だろう。
すれ違うのだけは避けなければいけない。
(しょうがねーから電話してみるあるか。)
「、にーにちょっと用があるからそこで大人しくしてるあるよー!」
「はーい!いいこにしてるー!」
「兄様、よろこんでくれるかな・・・?」
にーにがいなくなった部屋で包んだ兄様にあげる桃まんを見つめる。
兄様のお誕生日を知ったのはこの間。
遊びに来てたフェリとルートに聞いた。
『ヴェー、菊の誕生日ってもうすぐだよねー?何か欲しいものあるー?』
『俺からも何か贈らせてくれ。』
『お、たんじょう・・・び・・?』
『そうだよー。11日、だったよね?菊。』
『そうですね。2月の11日になります。
・・・けれど贈り物なんて。御気持ちだけで十分、嬉しいですよ。』
『ダメ―!菊は遠慮しすぎだよ。俺なんか欲しいものいーっぱいあるのに!』
『お前は少し遠慮しろ。菊を見習え。・・・だが、
フェリシアーノの言うことも一理ある。一つくらい何かあるだろう?』
『え、えと・・・。そうですねぇ、では、お二人の手料理がいいです。
11日でなくてもいいので・・・作ってくださいますか?』
『お安い御用だよー。パスタでいいの?』
『はい。』
『本当にそれでいいのか?』
『はい、十分です。』
・・・・・すごく、嬉しそうな顔で笑ってた兄様。
いいなって思ったの。
も、兄様に喜んでもらいたい。
(プレゼント・・・おりょーりがいいって。)
兄様には、内緒がいーな。
内緒にして、びっくりさせるの!
そしたらきっと、もっと喜んでくれる!!
(でも、だれにおしえてもらえばいーんだろ?)
内緒だから、兄様はダメだし。
フェリも、ルートもお家が遠いって兄様言ってた。
お家が、近い人・・・?
『また来るあるよ、ー!』
そーだ、にーにのとこ!
にーにのお家なら行ったことあるし、道も覚えたもん!
兄様に内緒にもできる!
『にーにんちいくーーーー!!』
『え、ちょ、!?ま、待ちなさい!!』
『いってきまーす!!』
『こ、こらーーーー!!』
勝手に出てきちゃったから兄様、怒ってるかなぁ・・・?
そういえば電話、一回もならなかった・・・。
『。』
『おはようございます、。』
『こら!そんなことしちゃいけません!!』
『どうしたんですか?・・・・あぁ、大丈夫ですよ。私はここにいます。』
『ふふ、ありがとうございます。・・・私もが大好きですよ。』
「う、ぅー・・・・・・・。」
兄様、兄様、兄様。
「に・・ぃ・・・・さまぁー・・・!」
「はい、何ですか。。」
「!?」
「全く、あなたって人は。危ないから勝手に出て行ってはいけないと言ったでしょう?」
「に・・・ぃさま・・・・?」
「はい。来てはダメだと言われたのですが・・・寂しくて来てしまいました。ぽちくんも一緒です。」
「きゃわん!」
「さぁ、帰りましょう?。」
「・・・・こって、ない・・?」
「え?」
「お、おこって・・ないの・・・?のこと、き、きらいに、ならない・・・?」
「ならないですよ。大好きです。兄様の言うこと、信じられませんか?」
ブンブン、と思いっきり首を横に振る。
「兄様、す・・きぃ・・・・!!」
「ありがとうございます、。」
「・・・つながらないある。」
ということは菊がもうそろそろ迎えに来るに違いない。
を連れて行く前に電話しておいてよかった。
「全く。せめて家を出る前に電話くらい寄こす良ろし。
我がすれ違うかもって気がつかなかったらどうするつもりあるか。」
まぁ、あいつらしいといえばらしいが。
「すみません、そこまで気が回りませんでした。」
「そんなこったろうと思ってたある。・・・・・・ってぎゃー!!」
「なんです、人を化けものみたいに。」
「ば、化けものと言われても今のはおかしくないある!!
いつからそこにいたあるね!声をかけてから家に入れと教えたはずある!!」
「声はかけました。ですが全然気づいてもらえる気配がなかったので・・・。」
「はぁ・・・、まぁ、いいある。迎えにきたあるか?」
「えぇ。・・・・駄目ですね。一人の生活にはもう戻れそうにありません。」
「・・・なら居間にいるはずある。早く行ってやる良ろし。」
「はい。がお世話になりました。」
「ほんとある。けど、楽しかったからいいあるよ。・・・しっかし。」
「はい?」
「いや・・・なんでもないある。」
あんなに何にも対して興味を示さず、何かに執着することを怖がっていた菊に。
こんなに夢中になって、離れることさえ耐えられない存在ができるとは。
「また、今度は二人でゆっくり遊びに来るといいある。」
「はい、そうします。・・・それでは、また。」
菊が出て行った方を見ながらが作った失敗作を手に、近くのテーブルに腰をかける。
「うわ、横から餡が出てくるある。」
ここ五日間でいくつ食べたであろう。
形はアレだが、・・・・味だけはかつて菊に教えたときと同じように完璧だった。
「よく似た兄妹ある。」
泣きじゃくる妹を背に乗せ、あやしながら帰り道を歩く。
しばらく歩いていると、泣き止んだ妹の手が後ろからにゅっと伸びてきた。
「・・・兄様。」
「なんです?。」
「おたんじょうび、おめでとう。」
その手には、一つの包み。
「も、しかして・・・。それを、作ってくれていたのですか?」
こく、と小さな頭が揺れるのが見える。
「、ちょっと降りてもらってもいいですか?・・・ちゃんと、もらいたいです。」
「・・うん。」
しゃがみこみ、ゆっくりとを地上に降ろす。
「あの・・・そのね。あんまり、じょうずに・・・できなかったの。
にーには、きれいにできてるっていってくれたけど・・・・・。
お、おいしくなかったらぺっしていいからね!!」
「しません。絶対に美味しいですから。」
「まだ、たべてないからわかんないもん・・・。」
「いいえ、絶対です。・・・・開けても、いいですか?」
「うん。」
丁寧に包装された包みを、破かないように綺麗に開けていく。
「桃まん、ですね。私の大好物です。」
「にーにが、おしえてくれたの。兄様は、これだけはよろこんでたべたって。」
「・・・そうですね。」
味は、どれも美味しいんですけどね。
「では、いただきます。」
「ど、どーぞ!」
ぱくっ もくもく・・・・ ごくん
「んー・・・」
「お、おいしく・・・ない?」
段々と眉間のシワが深くなる。
心なしか再び泣きそうな顔になっている。
本当に小さい子供というのは、反応がすぐ表情に出るので面白い。
ずっと見ていたい気もするほどに可愛いが、それはあまりにも可哀相だ。
「今まで食べたことないくらい、すっごく美味しいですっ!」
「ほ、ほんと!?」
「私が嘘をついたことがありますか?」
「ない!」
ブンブンと首を横に振りながら、満面の笑みでこちらを見る。
(・・・やはり、当分妹離れはできません、ね・・・。)
「兄様、兄様!」
「なんですか?。」
「だーいすき!!」
「・・・ふふ、私もだーいすき、ですよ。」
「・・・えへへ。」
「さぁ、早く帰って暖まりましょう。今夜も冷えますからね。・・・・帰ったら、」
今度は二人で、この桃まんを食べましょうか。
「兄様、ぽちくんもだよー。」
「そうでしたね、すみませんぽちくん。」
「きゃわん!」
「・・・あはは」
「・・・ふふ」
「菊?いきなりどうしたんだい、笑い出したりして。」
「え?あぁ、すみません。・・・少し、思い出に浸っていました。」
「・・・さっき言ってた、桃まん?と関係があるのかい?」
「えぇ。一番最初にから頂いた、桃まんのことですから。」
「ただいまー!」
「おや、噂をすれば何とやら、ですね。」
よいしょ、と席を立ち桃まんの甘い香りをさせながら帰ってきた妹を迎えに行く。
「お帰りなさい。」
「ただいま、兄様!・・・誰か来てるの?」
「えぇ、アルフレッドさんがいらっしゃってますよ。」
「アルが?それってもしかして・・・。」
「はい。私の誕生日をお祝いに来てくださったそうです。」
「えー!私が一番最初に言いたかったのに!!」
「残念だったね!キミが遅いのがいけないんだぞ?」
待ち切れなかったのか、アルフレッドさんも玄関までやってきた。
「アルの馬鹿ぁっ!」
「こら、女性がそんなことを言うものではありません。」
「・・・・アーサーの真似しただけだもんっ!」
へそを曲げたのか、プイっと顔をそむけられてしまった。
顔は真っ赤。目にはうっすらと涙がたまっている。
・・・・本当に昔から変わらない。
ずっと昔から、可愛い、可愛い、妹だ。
「・・・それで、私はもう妹君からのお祝いの言葉とプレゼントはもらえないんでしょうか?」
だから、こうして少しだけ意地悪になってしまうのかも知れない。
「・・・・・〜っ!」
「?」
「お、」
お誕生日、おめでとう兄様!