「菊ー!」
「おや、アルフレッドさん。今日はまたどうしたのです?こんな朝早くから。」
「どうしたって・・・忘れてるのかい?今日は君のバースデイじゃないか。」
「誕生日・・・?あぁ、今日は11日でしたか。」
なるほど、と納得をする。
だから妹が一昨日から『知り合い』の家に泊まっているのか。
「そうだよ!ほらこれ、プレゼントなんだぞ!」
「わざわざありがとうございます。・・・・・こ、れは。」
「ん?ケーキさ!バースデイといえばやっぱりこれだろ?」
「そ、そうですね。・・・・・・アルフレッドさん。」
「ん?なんだい?」
「今日は、2月の11日、なんですよね?」
「そうだぞ!さっきも言ったじゃないか。もう忘れたのかい?」
「いえ、確認をしたかったので。・・・・今日は美味しい桃まんが食べられる日なのですよ。」
美味しい美味しい、桃まんの秘密。
「にーにー!!」
「ん?おー、!久し振りあるなー大きくなったある!
一人で来たあるか?菊はどーしたある。」
「兄様にはないしょなのー!にーに、にーに!おりょーりおしえて?」
「料理?それはいいあるが・・・何かあるあるか?」
「あのね、もーすぐ兄様のたんじょーびなの!」
「あー、なるほど。教えてやるのはいーあるが、難しいあるよ?にできるあるか?」
「できる!」
たどたどしい言葉づかいをする、小さな妹。
(と言うと菊に「私の妹です。」と怒られるあるが、菊の妹であれば我の妹でもあるある!)
つい最近、菊が見つけてきたまだ小さな、小さな国。
「どんなのがいいあるか?」
「んー、おいしいの!」
「にーにの料理は何でも美味しいあるよ!んー・・・あ、これなんかどうある?
これならでもなんとか作れそうあるし・・・これにする良ろし!」
「どぉれ?」
ひょこひょこと跳ねるをひざに乗せ、料理の本を目の前へと広げてやる。
「これある。お祝いごとなんかの時に・・・」
「やーーーーーーー!!!」
ゴッ
説明をしようとした途端、広げてやった本が飛んできた。
クリーンヒットである。
「ってぇーある!!何するあるか!!」
「こんなのやらもん!にーにのばかぁー!」
「『こんなの』って何あるか!美味しいあるよ!」
「やらー!!そんなこわいおさかなさんやらー!!」
うわーんと泣き出す。
こうなるとすっごくめんどくさいのを我は知っている。
早く何か見つけないともっとひどくなることも。
「じ、じゃあこれなんかどうある!?確かこれなら菊は喜んで食べたはずある!」
「兄、様が・・・?」
菊の名前を出した途端にぴくっと反応する小さな体。
何で菊ばっかり好かれるあるか・・・・。
「にーに。」
「何あるか?」
「・・・・かわいいね、これ。もも、まん?てゆーの?」
「・・・!」
可愛いのはお前あるー!と抱きつくと
くるしい、にーにー。なんて更に可愛い声が聞こえてくる。
「これにするー!おしえて、にーに!」
「お安い御用あるね。さ、お前は先に手を洗ってくる良ろし!」
「はーい!」
「・・・・・なんでこうなるあるか。」
「・・・・ふぇっ」
「な、泣くなある!大丈夫あるよ。ほら、これなんかは上手に出来てるある!」
「それはにーにのつくったやつらもんー・・・・・ひくっ」
出来上がった桃まんは見るも無残な姿だった。
上手く皮がのばせていないのだろう。
山が噴火したようにてっぺんから餡が噴き出しているものや、反対に下が破けているもの、
皮が上下に真ん中から割れているものなどがほとんど。
そうでないものは上手くふくらまずにしぼんでしまっている。
「ま、まだ時間はいっぱいあるある!菊には我から言っておくから
しばらく泊まっていって一緒に練習する良ろし!」
「・・・う、うん・・・。」
「そうと決まれば次!次作るあるよー!」
「うん!」
『にーにのとこいってくる!』
と言って私の言うことも聞かずに飛び出していった妹。
何度か一緒に行ったことがあるものの、一人でなどまだ行かせたことはない。
(あぁ、途中で事故になんかあっていたら・・・。
はっ!可愛いからって攫われていたりしませんよね!?)
のことが頭から離れず、何も手につかない。
つい先ほども、皿を一枚割りかけた。
「あぁ、もうこんな時間でしたか。」
気分を紛らわすために縁側へ行き、空を見上げると
もう日暮れに差し掛かっており、いくつか星もみえていた。
(無事に着いていればもうだいぶ経つはずですが・・・・。)
連絡の一つもない。
(まぁ、あの人のことですし・・・・期待はしてませんが。)
彼の性格は把握している。(嫌でも)
着いていなければ連絡がなくても不思議ではないが、
着いていたとしても彼のことだ。
「よく来たある!」とかなんとか言ってを甘やかしまくって、
「連絡?そういえば忘れてたある。」と真顔で言うに違いない。
(自分でしますか・・・・。)
プルルルルルルル・・・・ プッ
「申す申す、耀さんはいらっしゃいますでしょうか?」
『おー菊!今電話しようと思ってたところあるね!』
「と、いうことはは無事に着いているわけですね?」
『いるあるよ!今元気に飯食ってるある!』
「今からだと帰りが遅いですね・・・迎えに」
『あー、はしばらく我が預かるある!だから迎えはいらねーあるよ。
菊はしばらく一人でいる良ろし!』
「は?いや、耀さん。何をおっしゃって・・・」
『がいるって言ったある。なー、ー?』
『なーに?にーに。』
『はしばらくにーにと一緒にいるあるねー?』
『うん!にーにといるー!』
「え、?」
『菊は来ちゃダメあるねー?』
『ダメあるー!』
「ちょ、ちょっと待ってください、!?」
『じゃ、そういうことある!』
『兄様、またねー!』
「!」
プッ ツーツー・・・
・・・・・無事でいることは分かりました。
それについては良かったです。安心しました。
けれど
何でしょう、このやるせなさは。
あんなに仲が良かったでしょうか、あの二人は。
「・・・・・・もういいです。」
プツッと自分の中の何かが切れた音がした。
「二人でラヴラヴでも何でもしていればいいじゃないですか!
私も私の嫁とラヴラヴしちゃうんですからねー!!」
なかばヤケになりつつ、パソコンの電源をつけ、イヤホンをセットし、
周りに菓子や飲み物も置く。
「ふふふ。最近はのめんどうを見ていてこっち方面はご無沙汰でしたからね。
やることなんかたくさんあるのですよ!!」
「くーん・・」
「ぽちくんも道連れです!寝かせませんからね!」
2月11日――――――
「にーに!できたー!!」
「今度は上手くできたあるか!?」
「うん!」
「よし、じゃあ蒸すあるよー。」
「はーい!」
桃まんを蒸し器に並べて火をつける。
「できるといーな。もう兄様のおたんじょーびだもん。」
「大丈夫あるよ。だいぶ上手になったある。
にーにと一緒にたくさん練習したある!」
「うん!」
「さ、先に包みを用意しとくある!」
「かわいいやつね!」
「分かったある、分かったある。」
「あぁ・・・さすがに五日間もの徹夜は老体には響きますね・・・・。
もうそろそろやるうこともなくなってきましたし・・・。」
不思議なことに、忙しい時は『毎日パソコンしたい!何故今ここに私の前にパソコンがないのだ!』
と思うが、実際に実行できてしまうと飽きがくる。
「・・・・。」
『兄様!』
・・・・・たった五日。
たった五日間いなかっただけ。
なのに、こんなに寂しい、だなんて。
会いたい、顔が見たい、だなんて。
(妹離れは、当分できませんね。)
さぁ、行きましょうか。もうそろそろ切れのようですから。
「わん!」
「ふふ、ぽちくんも一緒に迎えに行きますか?」
「わん。」
「では、行きましょうか。我が妹君を迎えに。」