好物ばかり与えてはいけません、



今日はとっても気分が良い。
何故かって?それは待ちに待ったにほろいど、『本田菊』がお家に来たから。
上手く歌わせることができるか、今でも不安だけど、頑張るんだから!

「・・・・・マスター。」
「んー?何、菊。」
「来たばかりで非常に言いにくいんですが、」
「え、何。良いから言って?気にしないでいいよ。」
「はい、・・・あの。」
「うんうん。」
「・・・・・が・・・・まって。」
「え、ごめん、聞き取れなかった。もう一回言ってくれる?」
「・・・・お腹がすいて、しまって・・・・・・。」
「えぇ!ご、ごめんね。気づかなくって!な、何がいい?あんまり豪華なものとかは無理だけど・・・・。」
「塩じゃけと、白米をもらえますか・・・?」
「え、うん。そんなのでいいの?」
「十分です、マスター。」
「じゃ、ちょっと待っててね。多分この間お母さんから送られてきたのがそのままあるはず・・・。」
「すみません。」
「ううん、遠慮なんかしなくていいんだよ。」

ええと、どこにしまったかな・・・?
でも塩じゃけと白米でいい、なんて。
まるで本当に人間みたい。なんだか不思議。
取り扱い説明書もさっき読んだけど、充電とかも特に必要はないみたいだし。

「・・・・・はい、これでいい?ご飯は昨日の残りだからちょっと硬いけど。」
「・・・ありがとうございます。いただきます。」
「召し上がれ。」

もそもそと少しずつ食べ進める、菊。
小さいから食玩のお茶碗とお箸がぴったりサイズ。
・・・・なんだか可愛い。買っておいて良かった、食玩。

「多かったら、残してもいいからね。私、食べるから。」
「いいえ。残すなどできません。マスターから頂いたものですし、私の大好物ですから。」
「そう?ならいいけど。」
「はい。」
「でも、無理だけはしないんだよ?」
「・・・はい。」
「ん、分かってるなら良し!」
「・・・・マスター、おかわりを頂いても、いいですか?」
「あぁ、はいはい。」

まずは、菊に何を歌ってもらおうかなぁ。
やっぱりカバーで練習して、それからオリジナル?
カバー・・・・何がいいかなぁ?
得意なのはアニソンだったよね。
あとは・・・・演歌とか歌謡曲だっけか。
うー・・・・ん、どうしようかなぁ・・・・。

「マスター、おかわり貰ってもいいですか?」
「うん。」
「マスター、まだしゃけはありますでしょうか。」
「うん。」
「マスター、塩を足してもいいですか?」
「うん。」

どーしようかなぁ・・・・・。
いっぱい歌ってほしい歌がありすぎて決められないよぉ!
こんなことなら、菊が来る前にちゃんと考えておけば良かった。

「ご馳走様でした。」
「あ、うん。お粗末さまでした。」

いけない、ずっと考えてたから菊がいつの間にか食べ終わってるよ。

「いきなり歌ってもらうのもあれだから、今日はゆっくりしてていいよ。」
「はい、ありがとうございます。マスター。」
「んー、そのマスターっていうの、やめない?」
「え、ですが・・・」
「なんか、堅苦しくて嫌だなぁ・・・。ダメ?」
「いえ、でも・・・」
「あ、私の名前覚えてない?」
「いえ、さん、ですよね?」
「良かった。」
「あの・・・さんでよろしいですか・・・?」
「え、あ、うん!嬉しい。・・・・ありがと、菊。」
「いえ、改めて、よろしくお願いします、さん。」
「こっちこそだよ!よろしくね、菊。」
「・・・ふふ。」
「・・・あはは。」





















次の日の朝。
私のベットの隣に作った菊のベットを覗くと、そこには。

「・・・・・・菊?」
「おふぁようほはいはふ、まふ・・・・、ふぁん。」(おはようございます、マス・・・、さん。)
「ど、どうし・・たの?その、姿・・・・。」
「ふぁんれか、おひはらほうらっれまひら。」(なんでか、起きたらこうなってました。)
「え、え、私何かした・・・・・!?」

昨日とは打って変わった、まんまるな姿の菊。
まるで相撲取りのようだ。

「と、取り扱い説明書・・・・・!!!」

たった一日、というかまだ正確には一日すら経っていないのに、
もう何かやらかしたのだろうか。
昨日したことといえば、挨拶して、お腹がすいたというからご飯をあげたことくらいだ。
あとは菊が一人でなんでもやってしまった。
何もしてない、はず・・・!

「『食事について』、これ?何々・・・・。」

『このにほろいどには基本、充電という作業はいりません。
 少量の、普段皆様が取られている食事を分けてくださればさして問題ございません。』

「だ、だよね?ちゃんと読んで確認したもの!」

『ただし』

「え、ただし?」

『にほろいどは塩分を好む傾向にあります。
 塩分を与えすぎると体がむくみますので、与えすぎには注意してください。』

「塩、分・・・・。」

もしかして、あの塩じゃけの、せい・・・?

「嘘!え、でもそんなにあげた!?あげたっけ私!!」
ふぁん?」(さん?)
「あ、菊!ねぇ、昨日の塩じゃけ、そんなに量食べた!?」
「ふぇ、・・・・4ひれろほはん3ふぁいらけれすれろ・・・・。」(え、・・・・4切れとご飯3杯だけですけど・・・・・。)
「し、塩じゃけ4切れ!?嘘でしょ、私そんなに焼いた!?」
「ふぁい、やいれくららいまひら・・・。」(はい、焼いてくださいました・・・。)

もしかしなくても、考え込んでたあの時だよね・・・!?

「・・・・・菊。」
「ふぁい?」(はい?)
「しばらくの間、塩じゃけ・・・というか、塩禁止ね。」
「ふぇえ!?」(えぇ!?)
「だってまさか、こんなになるなんて・・・!!やっぱり、当分ダメ。」
「ろんらぁー!」(そんなー!)








与えすぎるとまんまるになります。


だから、ちゃんと書いておいたのに。

















マスターと一緒。
第一弾!まんまる菊・・・・ちょっとみたい。