好きな奴が、いる。
stand motionless
一目惚れだった。
少しでも、あの子のことが知りたくて。
同じクラスだって知った時、幸せすぎて俺は死ぬんじゃないかと思った。
それが、一年の初め。
勇気をふりしぼって話しかけて。
それなりに仲良くなれた・・・・と思う。
それが、二年になる前。
そして、なった今でも。
ずっと、見てた。
見てたから、分かっちまった。
アイツには、には、好きな奴がいる。
普通に考えれば、当然のことだ。
が誰に恋をしていたっておかしくなんか、ない。
「アーサー!」
「・・・・、どうしたんだ?」
それでも、少しは意識してくれているかも・・・
なんて思っていた俺には、やっぱり大きなショックで。
「あのね、あのね!アントーニョくんに渡せたの、トマトのパン。
すっごい喜んでくれたんだよ!!」
「そっか、渡せたか。良かったな。」
「うん!」
そして、が好きなのはよりにもよって、苦手なアイツ。
いつもの俺なら、きっと無理矢理にでも奪うんだろう。
泣かせても、何をしても俺のものにする。
憎しみだって、何だっていい。
頭の中を俺のことでいっぱいにさせる。
何時だって思い出すのは、俺のことだけにさせる。
そう、いつもなら。
・・・・・・だけど。
「・・・・・あたしね、アントーニョくんが好き。」
「・・・・?」
「うん、ちょっと、聞いて?アーサー。」
「あ、あぁ。」
少しだけ頬を紅くした、の横顔。
「・・・・一目惚れ、だったの。」
「・・・・・あぁ。」
俺もだよ。
「フランシスくんと、ギルベルトくんと一緒にいてね、
・・・・まるで、太陽みたいに、笑ってた。」
「・・・・・・・・・あぁ。」
俺も、同じだ。
「クラスは離れちゃったけど、違ったから、窓から体育の授業とか見れたりして。」
一緒だったから、外を見ていたに気づいた。
「勇気出して話しかけて、・・・・”友達”って位置にいれるようになって。」
「あぁ。」
「すごくね、すごく、大好きに、なったの。」
俺も、この笑顔が、大好きになった。
だから苦しくて、切なくて、仕方ない。
好きだから、大好きだから、俺だけのものに、独り占め、したいのに。
それをしたら、この笑顔が、見れなくなる。
二度と、こんな風に話すことが、できなく、なる。
「・・・・良かったな。」
「・・・アーサー?」
それは、それだけは、嫌だ、から。
「頑張って、きたもんな、お前。たまに落ち込んでたりしたけど、
それでも、アイツのこと、好きなのは、止めなかっただろ?」
「・・・・アーサーが、いたから、だよ?」
「え、」
「落ち込んだ時は慰めてくれたし、
勇気出さなくちゃって思った時には、背中、押してくれた。」
「・・・・・。」
”友達”になろうと、した。
けど、その度にこうしてまた、に心を奪われて、いく。
「だからね、アーサーに、お礼、言いたくて。」
「礼、なんて・・・。」
「ううん、言わせて。」
好き、が溢れて止まらない。
知れば知るほど、の気持ちが分かって、
この想いの居場所がなくなる。
叶わない距離があるんだって、思い知る。
・・・・なのに。
「ありがとう、ずっと傍で支えてくれて。
アーサーがいなかったら、こんなに頑張れてなかった。」
こうして、がまた、笑うから。
「ば、馬ぁ鹿!そういうのは叶ってから言え!
い、いいからほら、昼飯食え!もうすぐ昼休み終わるぞ。」
「・・・ふふ、はぁーい。」
好きなのに、
好きだから、
動けないままで、いる。