「むー・・・・・・。」

小一時間。
ただ今、鏡の前で格闘中であります。


Acorralada



ー、ー?どこやん?ー!」
「?、スペイン?どうしたのー?」

ガチャ、とドアを開けて声に応える。
と、そこには真っ黒になった恋人がいた。

「ちょ、真っ黒じゃない!お風呂お風呂!」
「ん、それより見てやー
 今日もたーっくさん採れたんやでぇ。キレイやろ?」

かごに入ったたくさんのトマトを見て太陽みたいに笑うスペイン。
でもさ、絶対忘れてるよね?

「うん、キレイ。さすがスペインだね。」
「せやろ、せやろ。」
「うん、でもね、スペイン。」
「ん?何や、?」
「今日、この後もうすぐ出かけるんだよね?」
「あぁ、ロマーノのとこやろ?ちゃんと覚えてんでぇ!」
「私、久しぶりのお出かけで、すっごい楽しみにしてたんだけど。」
「今日は特におしゃれしとるもんなぁ?」
「だけどね、一緒に出かけるはずの恋人は泥だらけで真っ黒なの。なんで?」

うっ、とちょっと詰まったスペインを追い詰めるように見つめながら言葉を続ける。

「そりゃね、今日の出荷分は収穫しなくちゃいけないのは分かるし、
 お手入れだって必要だよ?私も今日は手伝えなかったし。
 でもね、今日は久々にもらったお休みの日で。
 トマトの世話だって今日は他の人に頼んだってスペイン言ったよね?
 『たまには2人でゆっくりしておいで』って私も言われたんだけど。」
・・・・。」
「トマト大切なのは分かるけど!私だって気にはなってるけど!
 でももうお昼なの。お風呂入って準備して!」
「・・・・ホンマ、はかわええなぁ。」
「もうっ、スペイン!?」
「分かった、わかったって。」

そう言ってスペインはお風呂場へと向かって行った。
私は再び部屋に戻り、鏡を見ながら格闘を再開する。











何分たったのか、意識していなかったけれど結構な時間が経っていたのだろう。
ガチャ、とドアが開いてスペインが頭を拭きながら入ってきた。

「んぉ?何しとるん、?」
「んー・・・・。」
「いや、『んー』やのぉて。」

鏡の端に、スペインの顔が映る。

「ピアス?」
「うん、全然入らなくて。」
「さっきもこれしてたんか?」
「うん。」
「ふーん・・・・、て、それ・・・・。」
「え?あ、うん。・・・・昔、スペインがくれたやつだよ。」

手の中にある、小さな赤いピアス。
それは、初めてのデートの日にスペインがくれたもの。
お金なんて全然もってないのに、私のために。
おもちゃにも見えるような、決して高くはないもの。
「久しぶりのお出かけだから、つけようかなーって。
 でも、この頃ピアス自体つけてなかったからなかなか通らなくて。」
「貸してみぃ。つけたるから。」
「え、ホント?じゃぁ、お願いしようかな。」
「ん、むこう向いてや。」

スペインはスキンシップが多い方だから、近い距離にいるのは、だいぶ慣れた。
だけど、こんな風に近いのは、見られるのは、初めて、で。

(何これ、ドキドキしすぎでしょ、私・・・・!)

スペインの息が、耳にかかる。
スペインに触れられている部分が、熱い。

「あー、確かにこれは自分じゃできひんかも知れんなぁ。」
「そ、う・・・?」
「ん、後ろの方、ほとんど塞がりかけとる。」

ちょっと痛いかも知れへんでー?なんて言って、またピアスに、私の耳に、触れる。

「よし!できたでー、。」

ヤバイ、やばい、ヤバい。
本当に心拍数が上がってきた。
スペインの顔、見れない・・・!

?」
「え、あ、あああありがと・・・・・。」
「どないしたん?真っ赤やで、顔。」
「え、な、なんでも!なんでもないから!」

指摘されると余計に顔に熱が集まってくる。

「そんなん言うたかて、トマトみたいやで・・・?」
「あー!あー、あー、聞こえなーい!!」

声色からして、スペインは絶対楽しんでる。
恥ずかしいのに!

「・・・・なー、?」
「何?・・・ほら、私終わったっから。スペインも準備して?」
「そのことなんやけどな?」
「うん?」
「やっぱり、家で2人で過ごさへん?」
「え、だって、ロマーノに行くって言っちゃったし・・・、それに、お出かけ・・・。」
「ロマーノには電話しとくから。
 出かけんのはまたにすればえーやろ?俺はずっとおるんやし。」
「でも・・・・・。」
「せやかて、、かわいすぎるんやもん。誰にも見せとーない!
 は俺のもんや!独り占めするんやー!」
「ス、スペイン・・・・。」
「ほな。」

ひょい、と音がしそうな程、軽やかに抱き上げられる。

「?」
の部屋でに浸るのもえーんやけど。
 やっぱり独り占めゆーたからには俺の部屋で、やろ。」
「え、ちょ、スペイン?」
「もう、離さへんで☆」
「星マークとか無駄につけてないで降ろしてよー!
 私はロマーノのとこに行くんだからー!!」
「なんやぁ、。俺にやきもち妬かせたいん?
 上手いなぁー。可愛がったるさかい、安心しぃ。」
「違っ!」
「さ、早ぉ行こうな♪」
「ス、スペインの馬鹿ー!!!」



                                              Fin.





相方?に実際「ピアス入んないから入れて」って言われたときに
これネタにしたら可愛いねーwwなんて話してたのが元です。
ピアスの色、スペインの瞳とおんなじ緑にしようかなーとも思ったけど、
トマトを出したらなんか赤かなぁ・・・と。
初ヘタ夢なのに暗転ってどうなの・・・・・・^^;










おまけ。

『ちゅーことで、今日は行かへんから。
 ごめんなぁ、ロマーノ。文句はまでな?可愛すぎるが悪いんや!じゃっ!』
「ちょ、来ねぇとか思ってたら電話してきて何が『ちゅーことで』だ、おい、このやろースペイン!」
『ブツッ』
「!!・・・・ふ、ふざけるなよ、このやろー。
 の好きなもの・・・・・たく・・・さ・・・・よう・・・し・・・・・・ちぎーーーーーーー!!!!」