今日で本当に最後なんだと思うと胸が苦しかった。
イギリスさんが手入れした庭の綺麗な花たちを見ることができなくなってしまう。
イギリスさんのいれるおいしい紅茶を飲めなくなってしまう。
私の頭の中はもうイギリスさんのことでいっぱいだった。
明日から私はどうなってしまうのだろう。
こんなにも私はイギリスさんを求めているのに、会えなくなってしまうなんて。


「イギリスさん」

「どうした、


もう荷物を送って二人でお茶をいただいている時にイギリスさんに声をかけた。
こうやって何気なく声をかけることはなくなってしまうのだろう。
私の言葉に返事をしてくれることもなくなってしまうだろう。


「私は、イギリスさんのいれる紅茶が好きです」

「イギリスさんの手入れしたお庭の花たちが好きです」

「イギリスさんと一緒にいられる今が好きです」

「私の中はイギリスさんでいっぱいです、どうしてくれるんですか」


こうやって話をするのも最後だから言いたいことたくさん言おうと思って、私は話を始めた。
イギリスさんは真剣な顔をして、私の顔をじっと見つめた。
庭の花が風でそよそよと揺れている。この穏やかな時間も、もうすぐ終わりだね。
イギリスさんと見てきたものすべてや、一緒に過ごしてきた時間が愛しくてたまらない。
私は小さく深呼吸をすると、言葉を続けた。


「私はイギリスさんのことが大好きです」


こんなにちゃんと自分の気持ちを伝えるのは久しぶりだった。
でも、今こうしてちゃんと言わないと、次はいつになるのかわからないから。
いつもは恥ずかしくて全然言葉にできないけれど、今なら何度でも言える。
会えない日の分まで全部全部伝えたい。いくらいっても足りないぐらい。

イギリスさんは一瞬だけひどく悲しそうな目をした。けれど、すぐに真剣な眼差しに戻り返事をくれた。


「俺も、のことが好きだ。離したくないし、誰にも渡したくない!」

「私も離れたくないです、もっとイギリスさんと一緒にいたいです……でも、でも私はっ」


イギリスさんは私の言葉を遮るように、耐えられないとでもいうように、席を立って私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。
私も離れたくないという気持ちをもっともっとイギリスさんに伝えるかのように、懸命にイギリスさんの背中に手を回した。
あぁどうしよう、ずっと我慢していたのに今頃涙がでてきてしまった。一度出た涙はいくら止めようとしても無駄だった。
きっともうすぐ迎えも来るでしょう。そうしたらイギリスさんとは、何日も何カ月も、いいえ何年も会えなくなってしまう。
これが夢だったらいいのに。夢ならば起きればまた愛しいあなたに会えるから。夢ならちゃんと、終わりが見えるから。


「イギリスさん、最後のわがまま聞いてくれませんか?」

のわがままなんて、いくらでも聞いてやる……」

「迎えがくるまで、ずっとこうしていてほしいんです」








明日になったらあなたとは離れてしまうから。


だから、今だけはわがまま言わせてくださいね。