さよなら私の太陽
もう少しだけ私にお話しさせてください。
何かをしても、何かをしなくても、さようならをする日は結局やってくるのです。
私がほとんどしゃべらなくなっても、彼は変わらず明るいまま私に接してくれました。
なんて優しい人。なんて暖かい人。彼のことを人と言うのは少しおかしいでしょうか。
この優しさを、私一人が受けることがきっと罪なのでしょう。彼の愛は皆のものであるべきなのです。
たくさんの人に愛された彼は、たくさんの人を愛さねばならないのだと私は考えました。
彼の感情の前に、国としての役割を果たすのです。なぜなら彼は国としてこの世に生を受けたから。
そして私はこの世に人として生を受けたから。私たちはきちんとその役にはまっていないといけません。
けれど、この世界には確かに彼がいて私がいます。二人が一緒にいた時間は消えないでしょう。
2度と会うことのない太陽に、私はさよならも言わずにこの場所からいなくなるのです。
しんとした空気があたりを包む。スペインはすっかり寝てしまっていた。
彼が起きてしまわないうちにと思ってそっと彼の元を離れる。
私は今まで一度もスペインが泣く姿を見たことがなかったけれど、
私がいなくなったら彼は私の為に涙を流してくれるだろうか。
「スペイン、スペイン。あなたは私と一緒にいて幸せだった?」
「さよなら」
確かにそう言おうとしたのに、それは言葉にならなかった。